バルトリン腺膿瘍

バルトリン腺とは

バルトリン腺とは バルトリン腺は、一般にはあまり知られていない女性特有の分泌腺です。
外陰部の膣入口から約1〜2cm奥、左右に1つずつ存在する非常に小さな腺で、形はエンドウ豆ほどの大きさをしています。
正式には大前庭腺(だいぜんていせん)とも呼ばれます。
バルトリン腺は、性的刺激を受けた際に無色透明でにおいのない粘液を分泌します。
この分泌液は膣分泌液と混ざり、性交時の潤滑を助ける重要な役割を担っています。
男性における尿道球腺(カウパー腺)に相当する器官です。
分泌される液体は、粘り気のあるとろりとした性状で、空気に触れることで白く濁って見えることがあります。
通常は刺激臭や酸味はなく、体調やホルモンバランスの影響によって性状が変化することもあります。
バルトリン腺の袋(導管)は、会陰部の比較的浅い位置に存在しており、炎症や詰まりが生じると腫れや痛みの原因となることがあります。

バルトリン腺嚢胞・膿瘍とは

バルトリン腺の出口(導管)が何らかの原因で塞がれると、分泌液が排出されずにたまり、バルトリン腺嚢胞が形成されます。
さらに、その嚢胞内に細菌感染が起こり、膿がたまって炎症を起こした状態をバルトリン腺膿瘍と呼びます。
嚢胞の段階では痛みがほとんどないこともありますが、膿瘍になると急激に症状が悪化し、強い痛みを伴うことが特徴です。

主な症状

  • 外陰部(膣の入口付近)の腫れやしこり
  • 触れると強い痛みがある
  • 歩行時や座った時の違和感・痛み
  • 発赤、熱感
  • 発熱を伴うこともある

膿瘍が進行すると、日常生活に支障をきたすほどの強い痛みが出ることもあります。

原因

主な原因は、バルトリン腺の導管が詰まることと、そこへの細菌感染です。
原因菌としては、大腸菌やブドウ球菌、腟内常在菌などが多く、まれに性感染症が関与することもあります。疲労やストレス、免疫力の低下、デリケートゾーンの蒸れなども発症のきっかけになることがあります。

再発について

バルトリン腺膿瘍は再発しやすい疾患です。
特に、切開排膿のみを行った場合、一定の割合で再発することがあります。
再発を繰り返す場合は、状態に応じて治療方法を検討することが重要です。

受診の目安

  • 外陰部に痛みや腫れを感じたとき
  • 歩く・座るのがつらいほどの違和感がある
  • 発熱を伴う
  • 以前にバルトリン腺膿瘍を繰り返している

デリケートな部位のため受診をためらいがちですが、早期に治療することで症状の悪化や再発を防ぐことができます。
気になる症状がある場合は、早めに婦人科へご相談ください。

検査・診断

検査・診断バルトリン腺嚢胞・膿瘍の診断は、主に問診と外陰部の診察によって行います。
診察では、膣の入口付近にある腫れの大きさ、左右差、圧痛の有無、皮膚の赤みや熱感などを丁寧に確認します。膿瘍の場合は、触れるだけでも強い痛みを伴うことが多く、炎症の程度を慎重に評価します。
症状の経過や痛みの出現時期、発熱の有無、過去に同様の症状を繰り返していないかといった点も、診断において重要な情報となります。
必要に応じて、腫れた部分からの分泌物や膿を採取し、細菌培養検査を行うことがあります。これにより原因菌を特定し、より適切な抗菌薬を選択することが可能になります。
また、再発を繰り返している場合や、性感染症の関与が疑われる場合には、状況に応じて追加の検査を行うこともあります。

治療法

バルトリン腺嚢胞・膿瘍の治療は、症状の程度や炎症の進行具合に応じて選択されます。

薬物療法

薬物療法腫れや痛みが軽度で、膿の貯留が少ない場合には、抗菌薬や消炎鎮痛薬を使用し、炎症を抑えながら経過を観察します。
この段階で適切な治療を行うことで、膿瘍への進行を防げることもあります。

切開排膿

膿がたまって強い痛みを伴う場合には、局所麻酔を行ったうえで切開排膿を行います。
腫れている部分を小さく切開し、内部にたまった膿を排出することで、圧迫が解除され、多くの場合は処置直後から痛みが大きく軽減します。
処置後は、感染の再燃を防ぐために抗菌薬を併用することが一般的です。切開部は自然に治癒していきますが、医師の指示に従って清潔を保つことが重要です。

開窓術(再発予防の治療)

切開排膿を行っても再発を繰り返す場合には、開窓術という方法を検討します。
これは、バルトリン腺膿瘍を切開し、傷がふさがらないよう創部をかがり、分泌液がたまりにくい状態を作る治療法で、再発予防に有効です。

その他の治療

症状や年齢、再発の頻度などを総合的に判断し、必要に応じて他の治療法を検討することもあります。